秋の田んぼのあぜ道や、川の堤防を散歩すると見かけると、彼岸花をよく見かけます。
群生して咲く真っ赤な花は美しいですが、彼岸花に不気味な印象を持つ人も少なくないでしょう。
日本では昔から、彼岸花に不吉な印象を持ってきました。
「曼殊沙華(まんじゅしゃげ)」という別名も有名ですが、他にも「死人花」「地獄花」「幽霊花」など、怖い別名がたくさん残っています。
彼岸花は、にょきっと伸びた茎の上に大きな一輪の花があるだけ。
その姿も独特ですし、「毒」も持っています。
今日は、そんなミステリアスな彼岸花について詳しくご紹介したいと思います。
本当に葉はないのか?種で育てるのか、球根で育てるのか?
毒は強いのか弱いのか? などなど。
彼岸花についての豆知識をまとめてみました。
目次
彼岸花に葉はない?
秋に咲いている彼岸花を見ると、確かに葉っぱがありません。
地面から太い茎が生えていて、その上に花が咲いているだけです。
やっぱり葉はないのでしょうか。
いえ、あります。
植物ですから、ちゃんと葉はあるんです。
しかし、花が咲いている秋にはありません。
彼岸花は「花が咲く季節と葉が出る季節が全く違う」という不思議な植物なのです。
だから、花が咲いている時期に葉はありませんし、逆に葉が茂っている時期に花はどこにもありません。
その特徴から、「葉見ず花見ず」なんて呼ばれたりもします。
彼岸花にはちゃんと葉がありますが、花が咲いている時期には葉が出ないので、「葉がない!」と思われてしまっているだけなのです。
彼岸花の葉はいつ出てくる?
では、彼岸花の葉はいつ出てくるのでしょう。
それは、花が枯れた後となります。
彼岸花の一年間の生活を見てみましょう。
まず、9月上旬頃から芽を出します。
茎をするすると伸ばし、9月の上旬頃、さっそく花を咲かせます。
その後、花は枯れていってしまいます。
花がすっかり枯れ、秋も深まった頃、根元から葉が生え始めます。
葉は濃い緑色で、長さ30cm~50cmの細長い形です。
冬の間中、こんもりと茂っていた葉は、春になると次第に枯れていきます。
4月を過ぎ、初夏を迎えるころには、彼岸花は地上から消えてしまいます。
しかし、彼岸花は死んでいません。
彼岸花は多年草なので、寿命は一年ではないのです。
土の中で生き続けた彼岸花は、秋が忍びよる9月頃、再び地上に芽を出すのです。
こうして見ると、他の植物はと全く逆ですよね。
普通は春に芽を出して秋に枯れていくし、葉が茂ってから花が咲きます。
なぜこんな事になったのか、この不思議さが彼岸花の魅力でもありますよね。
彼岸花に種はない?
引用元:https://www.pakutaso.com
(画像はイメージです)
彼岸花には、ちゃんと葉があることが分かりました。
では、種はどうでしょうか?
「あんなに立派な花が咲くのだから、そりゃあ種もできるでしょう」と、私は思ったのですが、調べてみて驚きました。
彼岸花は、種をつけません!
花は咲かせますが、実をつけることもなく、種も作らないのです。
どういう事でしょうか。
その理由はかなり難しいので、簡単に紹介します。
彼岸花が種を作らない理由は、染色体セットの数にあります。
私達人間も含め、染色体セットの数は通常2つです。
父親、母親からそれぞれ受け継いだ1セットずつを持っているからで、この状態を「2倍体」と言います。
しかし、彼岸花は「2倍体」ではなく「3倍体」なのです。
染色体セットが、3つあるんですね。
「多いとどうなるのか?」というと色々ありますが、ここで関係してくるのは「子孫を残せない」ということです。
彼岸花に限らず「3倍体」の生命は、他の仲間と受精や受粉をしても、染色体セットの数が原因でうまく卵や種が作れません。
つまり、「3倍体」である彼岸花は、種を作らないのではなく「種を作れない」のです。
この話を知って、彼岸花がますます不思議な存在に思えてくるのは、私だけでしょうか。
知れば知るほど、彼岸花はどこからやってきて、どうしてこうなったのだろう、と思えてなりません。
ちなみに、中国の彼岸花は「2倍体」なので、普通に種ができるそうです。
うーん、ますます「なぜ、日本の彼岸花は?」ですね。
彼岸花は種がないのにどうやって増えるのか
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(画像はイメージです)
種がない彼岸花は、どうやって増えるのでしょうか。
答えは、「分球(ぶんきゅう)」です。
「分球」とは、球根が増えていくことです。
彼岸花は、球根の植物です。
正確には球根の中でも「鱗茎(りんけい)」という種類ですが、どういうものかというと「タマネギ」を想像してください。
タマネギは「鱗茎」植物の代表格ですから、彼岸花の根元も土の中であのようになっていると思えばいいでしょう。
球根は成長していくと、自分の周りに新しい球根を作り始めます。
新しい球根はやがて本体から別れ、独立した球根となって生きていきます。
これが「分球」です。
彼岸花が、種が無いのに増えていくのは、「分球」をしているからなんですね。
しかし、この分球。子孫を残している訳ではありません。
自分の体の一部が育ち、やがて離れて生きていくわけですから「クローン」と言っていい訳です。
実際、日本に咲いている彼岸花は、遺伝的に全て同一であるそうです。
これ、すごい話ですよね。
最初は一つだった球根が、分球を繰り返し、生まれた球根もさらに分球し、今や日本中に広がって生えている訳です。
途方もないスケールに驚かされますよね。
彼岸花の葉は切ってはいけない??
彼岸花は、冬の間のみ、葉を茂らせます。
花が終わってから葉が出るので、葉の茂った彼岸花を置いておいても、もう花は咲きません。
春になると葉も枯れてしまいます。
そうなると、「葉を置いておいても、意味がないな」と、葉を切りたくなるかもしれません。
でも、絶対にやめてください。
彼岸花の葉は、来年、次の花を咲かせるために絶対に必要なんです。
彼岸花は、なぜ秋になるといきなり花を咲かせられるのでしょうか。
花を咲かせるにはたくさんの養分が必要ですが、彼岸花は芽が出るとすぐに立派な花を咲かせることができます。
その理由は、前の冬の葉にあります。
冬の間中、葉っぱで光合成を行い、作った養分をたっぷりと球根に蓄えているからです。
しっかりと溜めた養分を使い、彼岸花は秋の発芽からいきなり花を咲かせるのです。
ですから花が終わったからといって、その後に出てくる葉を切ってしまうと、養分を溜められず弱っていってしまいます。
彼岸花の葉は、次の年の花を咲かせるための準備をしているので、絶対に切ってはいけません。
彼岸花の葉や種に毒はある?
彼岸花は「毒」を持っています。
「どこに毒があるの?」と考える必要はありません。
花も葉も茎も根も、その全てに毒があります。
こういったタイプの毒草を「全草有毒」と言います。
当然、葉にも毒があります。
しかし、最も毒が強いのは球根ですので、葉や花などであれば、触っただけですぐに危険な症状が出る、という事はありません。
彼岸花の毒は、主に経口摂取した時、つまり食べたときに被害が出ます。
「彼岸花なんて食べる人、いるの?」と思った私ですが、意外や意外、彼岸花の球根を食べる歴史は古くからあったようです。
というのも、彼岸花の主な毒の成分「リコリン」は水に溶けやすいため、球根を長時間水に漬けておけば、毒を抜くことができるそうです。
いやぁ、昔の人はすごいですよね。
どうやって、その方法を発見したのか、教えてほしいものです。
また、上記のような方法があるとしても、やっぱり彼岸花の毒は危険。
なにせ、特別な解毒剤もないので、うっかり毒が残っていたりすると、大変な目にあいます。
簡単な気持ちで真似したりしないようにしましょう。
また「種に毒があるか」ですが、調べてみても分かりませんでした。
そもそも種はつけないので何とも言えないのですが、とちの実やカシューナッツなど、種子に毒を持っている植物は多くあります。
彼岸花も、もしも種をつけられたとしたら、毒を持っている可能性は十分ありそうですね。
彼岸花は球根で植える?
彼岸花を育てたいと思った場合、種はありませんが、球根から育てることができます。
球根は普通に市販されていますので、簡単に手に入れることができます。
また、彼岸花はとても丈夫で病気にも強く、初心者でも育てる事ができる花です。
庭がある方なら、一度植えると放っておいても数年間、花を咲かせてくれたりします。
何年か育てる事ができたら「分球」が進みますので、植え替えも兼ねて掘ってあげれば、新しい球根も手に入ります。
秋の庭の彩りに、ぜひ彼岸花を育ててみてはいかがでしょうか。
球根で植える彼岸花を紹介
彼岸花の球根を手に入れよう、と考える方に、おすすめの球根を紹介します。
リコリス ラジアータ(ヒガンバナ「彼岸花」) 10球入り
リコリスとは彼岸花の別名になります。
こちらでは充実した大きな球根を手に入れられます。
10月中旬から5月頃までは、ポットに植えた状態で送ってくれますよ。
まずは試しに植えてみたい、という場合に手ごろな数ですね。
【1年間枯れ保証】【球根】シロバナヒガンバナ
こちらは通常の赤い彼岸花ではなく、白い花を咲かせる「シロバナヒガンバナ」です。
赤だけではなく白を混ぜて植えてあげるのも 鮮やかでいいですよね。
こちらのお店では「1年間枯れ保証」をつけていることも魅力です。
ヒガンバナ/リコリス オーレア(黄金花) 5本セット
こちらは、黄金色の彼岸花です。
彼岸花は同種をまとめて「リコリス」とも言います。
黄金色は、まるで花火のような花の形にとても合いますよね。
ぜひ、赤色とセットで植えてみてください。
まとめ
今回は、ミステリアスな彼岸花の特徴についてまとめてみました。
他の花にはない特徴があるのが、独特な雰囲気を放つ理由なのかもしれませんね。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。